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女子大生の鍋

女子大生数人による、思想の闇鍋・オープンスペースです。

個別塾バイトでのブラックな思い出

こんにちは。新宿区新宿です。前回は個別指導の塾バイト全般に言えるであろうブラックさについて紹介しました。今回は、私がどうしても書き残しておきたい個人的なブラック塾バイト経験についてのお話です。

まず、個別指導塾は基本的に、進学塾のグループ学習にはついていくことが出来ない学力、または素行の子どもがメインターゲットです。いわゆる優等生はあまり見かけません。

私も様々な生徒を担当していました。しかし、私が担当していたある1人の子に関しては、「多動児」「だらけがち」「家庭に問題があり、少々グレそう」なんてくくりにはまとめられない、もっともっと深刻な問題を抱えていました。

その子は、いわゆる「学習障害」ではなかったかと今は考えています。
(私には、病院で学習障害によりカウンセリングを受けているいとこがいます。彼の様子は、そのいとこに重なる部分が多々ありましたのでこのように推測しています。)


その生徒をAくんとします。Aくんは小学生の頃から、苦手な算数の授業についていけるようにするために個別指導塾に通っていました。
私は、Aくんを小6から中1の途中まで担当していました。

Aくんは、塾での勉強の成果もあってか、小学校の授業はなんとかついていけているようでした。
また、Aくんは塾主催の全国模試を受けていました。彼の模試成績を見る限り、算数は他の教科よりマシでした。
みんな「算数は塾で補習を受けているから当然、このような成績になるだろう」と考えていましたが、実はそれが間違いでした。

彼は国語の成績がとても悪かったです。しかしながら、Aくん本人も、親御さんも、毎回算数の成績に一喜一憂し、低空飛行な国語をあまり気にしていませんでした。また、塾では算数しか受講しておらず、国語の追加受講を勧めても(お金も時間もかかるので当然)Aくんも親御さんも渋っていました。

さて、問題が表面化したのはAくんの中学入学がきっかけでした。
中学数学では、1年生の一番はじめは、正の数・負の数という概念を知った上での言葉遊びみたいな単元です。
例えば、「私は5キロやせた」は数学の世界では「私は−5キロ太った」とも言えます。
逆の意味の言葉を使ったもので、一度仕組みを理解すれば単純です(逆にすればいいだけですから)
さて、国語ができないAくん、ここからつまづきました。
ですがいつまでもこのパートばかり演習するわけにはいきません。どうにか正の数負の数を理解した(ことにした)ら、次はそれを利用した計算問題や文章題を解くパートに入ります。
ここからAくんはほぼほぼわからなくなってしまいました。
この単元を二ヶ月間くらい、学校で、塾で勉強しました。彼は、(彼にとっては)たくさんの問題を解きました。

しかしながら、その二ヶ月後の結果は散々でした。学年平均80点のテストで、Aくんは30点でした。二ヶ月その単元しかしなかったにもかかわらず、です。

計算問題はケアレスミスだらけ、、、不注意というか、彼は注意散漫なところがあるのです。
で、肝心の文章題は全くできていませんでした。
Aくんと一緒にテストの振り返りをすると、文章題は計算ミスというよりも、
問題の意味が全く分かっていませんでした。要するに、文章の意味・意図がわからなかったのです。「逆さま言葉」がうまく理解出来ていないだけでなく、長回しな文章や少々複雑な言い方の問題は、そもそも何を求めればいいのかわかっていないようでした。

Aくんの成績について、担当講師である私は室長やエリアマネージャーに怒られました。
「親御さんが、塾に通わせている意味がないと怒っている。どう責任を取るのか。君の指導報告書を見たが、宿題の量が少なすぎる。今回のことは君のミスでしかない。」
と言われました。私の上司であるにもかかわらず、自分には一つも責任がないという物言いにはびっくりしました。

私がAくんに(同学年の他の子たちに比べて)あまり宿題を出していないのには理由がありました。
まず「丸付けもしてきてね」と答えと問題を一緒に渡すと、間違いなく答えを写しただけのものを提出してきます。意味ない。
つぎに、Aくんの中学の宿題が多かったため、彼はそれで精一杯であろうという判断です。
さらに、学校で習ってその後塾でも復習しても、彼はあまり理解出来ていません。理解していないのに闇雲に問題を解いて全部間違えるのはアホらしすぎます。
そして、彼の集中力は5分と持ちません。何分も連続して問題を解くことは、彼の頭をパンクさせているようでした。

エリアマネージャーはもともと数学が専門らしく、そこから私とエリアマネージャーはサービス残業しまくって彼に指導するようになりました。エリアマネージャーは彼にそれまでの10倍は宿題を出しました。Aくんもなんとか我々の指導についていこうとしてくれました。しかしながら、案の定宿題が提出日までにすべて終わることはありませんでした。そして、単元の理解が深まることもありませんでした。

私は、エリアマネージャーのとりあえず居残りさせまくる、とりあえず宿題出しまくるという方針を疑問を感じるようになりました。日本語がわかっていない子に数学の文章題のプリントをひたすら解かせる(そしてほとんど一発では正解できない)のに何の意味があるのでしょう。そしてそもそもAくんは学校の宿題に加えて、塾での何十枚に及ぶプリントを処理するだけの学力も集中力もありませんでした。
また、私はAくんが文房具の使い方を間違えているのがいつも気になりました。シャープペンの芯の正しい補充の仕方もわからないまま、彼はシャープペンを使っていました。親御さんは教えないのか?本人は学校でお友達の様子を見て気づかないのか?学校の先生はなにしてるの?

室長もエリアマネージャーも、Aくんは数学というよりもむしろ、国語や日常生活におけるものの使い方、そして度を超えた注意散漫さなど、もっと根本的な大問題を抱えていることに気づいていたと思います。彼らも一応プロですから。でも、室長やエリアマネージャーなど正社員にとっては、生徒はただの金ヅルです。Aくんに必要なのは数学のプリントではなくカウンセリングを一度受けに行ってみることです。でも、金ヅルを繋ぎとめておくことが大切なので、社員はあえて親御さんにそれを伝えなかったのだと思います。今時は、どんなに伝え方に気をつけても「うちの子を障がい児扱いか!」などをキレられる可能性も十分ありますから、仕方ない部分もあるかなと思いますが。(最も、こういったことを伝えるのは塾の仕事ではなく、中学校の先生がすべきことだとは思うのですが)

ただ、学習障害の可能性があるとなると、ただのバイト講師である私の手に負える問題ではありません。
それにも関わらず、塾の社員は見て見ぬ振り。宿題と居残りをさせて現実逃避しているようでした。
しかもAくんの中学の担任教師に至っては、「通わせている塾が合っていないのでは?」
などと言ってのけたそうです。そもそも中学校が塾任せという劣悪な状況でした。教員免許を持っており、一通り学習障害などについての勉強をしてきたはずの教師ですが、めんどくさいことには首を突っ込みたくなかったのでしょうね。

私はもう無理、と感じて退職することにしました。
誰も救われない実情に我慢が出来なくなったのです。
Aくんという大問題を抱えながら、同時並行で多動児の子や非行に走りかけている中学生、高校受験を控えた生徒…という残り5、6人も担当することはできないと思ってのことです。Aくんには申し訳ないですが、Aくんのことばかり構っていたら、他の生徒さんも同じだけ費用を納めてもらっているのに、それに見合う十分な指導ができなくなってしまいます。(基本的に、個別指導塾の講師は1人で何人もの生徒を受け持ちます。)




Aくんの親御さんにもいろいろ思うところはありますが、今回はあくまでいかに塾バイトが割に合わないか、というお話ですのでそれについてはなにも書きません。

これを読んで、私がAくんをはじめとする多くの担当生徒を見放した、と思う方もいらっしゃるでしょうし、責任感ないなあと思う方もいらっしゃると思います。
しかしわたしは、日中は大学で講義を受け、自分自身の将来に向けて勉強をしています。わたしにはわたしの生活があります。まだ大学も卒業していないのに、バイトのせいで生活が狂ったり、心を病むことだけは嫌でした。(ちなみに、わたしの働いていた塾チェーンは、ネットで「留年生養成所」と呼ばれています…)
奨学金を借りてまでして大学に入ったので、バイトのせいで学業がおろそかになることは許せませんでした。親もそれは許しませんでした。本末転倒なので。
わたしがわたしの人生をちゃんと歩むためには致し方なかったと思っています。
Aくんがどうなったかは知りません。でも、不幸の連鎖を断ち切るにはわたしみたいな非情な人間も必要なのかもしれません。

塾だけでなく飲食など「ブラックバイト」で悩まされている大学生はたくさんいると思いますが、、、もう誰もつらい思いをしなくなる日が来ることを願うしかないですね。来ないでしょうが。これからバイトを選ぶ方にできる唯一の自衛策は、とにかく少しでも評判の悪い業種・企業などのバイトは面接も受けないようにすること。
そして、もしブラックバイトに引っかかってしまったら、自分と自分の家族や友人など、自らにとって本当に大切な人たちのことを一番に考え、時にそれ以外の事象に対しては非情でいることですね。残念ですが、それしかないかと。